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クレイヴ・サーガXの話をさせてほしい

クレイヴ・サーガXの話をさせてほしい。

crave-saga.jp*1

 

転生したらFANZA GAMESだった件

先日2月16日(木)よりFANZA GAMES*2にて配信開始されたブラウザゲームクレイヴ・サーガ 神絆の導師』のR-18版、それが『クレイヴ・サーガX』である。

男性しかいない(重要)異世界に転生した主人公が、出会った仲間たちと(いろんな意味で)絆を結び、天使と悪魔の最終戦争に曝された世界の危機に立ち向かっていく――という物語のあらすじからもわかるように、本作は男性同性愛者を中心にターゲット層を絞ったいわゆる『ゲイ向けゲーム』に分類される。

こうしたゲームが基本無料・アイテム課金制で展開されること自体は先例がないわけではない*3が、本作はなんといっても会員数3100万人*4を誇る「DMM GAMES」からリリースされるということで、発表当初から界隈の熱い注目を集めていた。

youtu.be

キャラクターイラストにはゲイ向け創作の分野で有名な漫画家・イラストレーターを多数起用するばかりでなく、わざわざプロモーション用に主題歌まで作成。さらに新宿2丁目のバーゲイ向けマッチングアプリとコラボするなど、通常のゲームとは異なるアプローチも駆使して積極的なプロモーションを行ってきた。

その姿勢からは、これまで(ゲイ向けに限らず)ゲームそのものを嗜んでこなかった潜在的なユーザー層、いわゆる『シャイニー*5なゲイにもアプローチしていこうという強い意志が感じ取れる。必ずしもブルーオーシャンとはいえないゲイ向け課金制ゲームの世界に挑むにあたり、少ないパイをできるだけ増やそうという腹積りだろうか。

genxy-net.com

youtu.be

プロデューサー自ら動画やインタビュー記事で宣伝に励んだ本作は、果たしてDMM/FANZA GAMES開始ランキング1位FANZA GAMES人気ランキングiOS1位Android3位という見事なスタートダッシュを切った。美少女ゲームが乱れ舞うDMM/FANZA GAMESのランキングに徹頭徹尾雄臭い本作がランクインしている光景は衝撃的なものであり、SNSでも話題を呼んだ。リリース初日からしばらくの間「クレサガ」がTwitterのトレンドに入る時間帯もしばしばあり、滑り出しは上々といえるだろう。

かくいう私もリリースを今や遅しと待ち望み、初日に諭吉と少しを注ぎ込んでSSRキャラ(あんまり好みじゃない)を3体ダブらせて咽び泣きつつも楽しくプレイを続けている身である。この記事では、私の本作に対するごく個人的な感想として、良い点・悪い点・期待する点をいくつかの節に分けて語らせていただきたい。

なお、記事には本作のプロローグ〜第5章および一部キャラクターに関するネタバレを含む。核心に触れる内容はなるべく伏せているが、気になる方はある程度プレイした後の閲覧を勧める。

 

概要ですが、なにか?

主人公と仲間たちの明るい王道ストーリー(プロデューサー談)

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↑その通りである。

 

本作は記事冒頭で述べたあらすじの通り、男だけの異世界『ヴェストリア』に転生した主人公が仲間と共に世界を救う――という、いたって一般的な冒険ファンタジーである。冒険にかこつけて男同士でいやらしい行為に及びまくることを除けば。

本作における主人公は『導師』と呼ばれ、神に選ばれた救世主として位置づけられている。ごく普通の(ゲイの)サラリーマンだった彼がいきなりそのような大役に祭り上げられ、世界を守ることになる。戸惑いながらも使命を果たしていくと、やがて彼を認める仲間たちが集まり、絆で結ばれた大きな力の連なりとなっていく。

あらすじだけを見るならば、懐かしのローファンタジー*6に、昨今流行りの(というよりもうすっかり定番ジャンルの一つになっている)異世界転生モノのテンプレートをはめこんだような、よく言えば『王道』、悪く言えば『ありきたり』な物語である。

しかし先述の通り、本作はゲイ向けゲームであり、登場人物は男性のみ。したがって、異性愛という概念そのものが存在しない異世界の住人たちは当然のこととして男同士で情を交わし、体を重ね、子を成す*7。この点に限って言えば、本作はある程度ユニークさをもったストーリーであるといえるだろう。

男だけの異世界で繰り広げられる、王道の冒険譚。ぶっ飛んだ基幹設定と、既視感上等のコテコテファンタジーが織りなすシナリオの出来映えについては、後述する。

理由(ワケ)あってもなくても、SEX!


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↑ロトンはR、チャックはSSRのキャラ。寝室イベントはどんなレアリティでも最低1つ用意されていることがわかる。

 

本作最大の特色は、なんといってもプレイアブルキャラクターすべてにR-18スチルを交えたエロイベントが用意されているということだろう。

ストーリー進行やアイテム交換で入手可能なキャラクターも、ガチャから排出されるキャラクターも、みな例外なく『寝室イベント』という性行為描写を含む短編イベントが用意されており、複数の差分を含んだスチルと共に各キャラクターの艶めかしい恥部がこれでもかと披露される。

この仕様のありがたいところとしては、レアリティの低いキャラクターにも分け隔てなくスチルが用意されており、ガチャ運に恵まれなくとも数多くのキャラクターの痴態を拝むことができるという点。もっとも、最高級レアリティであるSSRのキャラクター*8には寝室イベントが2種用意されているので、レアリティ差が皆無というわけではない。また、そもそもエロイベントが見たいキャラのレアリティが高い場合は……頑張ってくださいとしか言いようがない。

なお、寝室イベントは全年齢版の『クレイヴ・サーガ』にはもちろん存在しないが、全年齢版とR-18版はセーブデータを共有して切替可能であるため、全年齢版で遊び始めたプレイヤーであっても、『クレイヴ・サーガX』に切り替えれば問題なく寝室イベントを閲覧できる。

また、本編メインシナリオ中にもエロイベントが挿入されることがあり、こちらも寝室イベント同等のスチル・差分が用意されている。そのため、『クレイヴ・サーガX』についてはうっかり公共の場で遊ばないように気を付けたいなお、私は「さすがにプロローグからエロいことはせんやろ」とタカを括ってプロローグを電車内で遊び、酷い目に遭った。

ゲームシステムについて

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↑どうも既視感の拭えないUI。

 

本作のゲームシステムは、いわゆるコマンド制RPGである。キャラクター5人+神器*9を編成し、敵の配置や属性に合わせてそれぞれのアビリティを選択して攻撃する。神器は編成するだけでパーティー全体に強化効果をもたらす上、戦闘中に召喚することで敵全体に大きなダメージを与え、3ターンの間のみ戦闘に加わってくれる。

戦闘によって得たアイテムを使ってキャラクターとその装備武器、神器といった様々な要素を強化し、戦闘力を上げて更なる難易度へ臨む……といういわゆる『周回』要素の強いゲームであり、アイテムを得るために同じステージを何度も繰り返す行為がプレイ時間の多くを占める。これについては本作独自の特色ではなく、昨今の基本無料ゲームにおいてはごく一般的な方式である。拙文をお読みの諸兄においても、今日もどこかで特異点やら空の島やらを周回し続けている方はそう少なくはないだろう。もっとも、本作の『周回』はのっけから凄まじい修羅の道と化しているのだが……(後述)。

抜きイベントは骨付き肉とともに。

可愛い推しには肉を喰わせろ


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↑最低ランクの肉が『腸詰肉(ソーセージ)』というのも、何やら意味深である。

さて、上述した寝室イベントだが、「目玉要素なら見るのに多少手間がかかったりするんじゃないの?」とお思いの諸兄も多いことだろう。ところがどっこい、寝室イベント*10の閲覧条件は「レベル20(または15)までの育成」と、本作においてはさして難しくないものとなっている。

本作のレベルアップアイテムはズバリ「肉」なのだが、上述の条件は肉の中でも下から数えて二つ目のランクである「骨付き肉」約6個で容易く達成できる程度のものである。骨付き肉を振る舞うだけで推しが脱ぐ。なんと手軽な。本作において天使たちが危惧する『人間の愚かさ』も、このベッドインまでがあまりに早すぎる性の乱れに起因するものなのではないかと、勝手に心配したくなってしまうレベルのスピード感である。

とはいっても、プレイヤーとしては手間なくムフフな場面を楽しめて大助かりなのは確か。ガチャで引き当てた目当ての男にいち早く肉を喰わせて寝室に突っ込む流れは、本作のプレイヤーなら必ずといっていいほど通るド定番のパターンといえるだろう。肉食って、寝ろ(性的な意味で)

あんなプレイも、こんなプレイも

さて、肉を振る舞った先に待ち受けるエロイベントだが、その内容は実に多岐にわたる。主人公と対象キャラクターが絡むにしても、主人公がタチ*11ウケ*12どちらに回るかはキャラによって様々だ。

性行為の相手が主人公でない場合も多く、その内訳は秘密クラブのボーイであったり、裏路地の怪しげなマッサージ店の店員であったり、敵対する国の兵士であったり、はたまた一人遊びだったりとこちらも多種多彩。もちろん、シチュエーションやプレイもキャラごとにバリエーション豊かで、中にはかなりハードなもの*13も含まれる。

このように、キャラクターの個性と多様なプレイの掛け合わせによって、プレイヤーを飽きさせないさながら四十八手の如きセックス曼荼羅が展開されるのである。

……もっとも、「見た目が好みなのにポジションが希望と違ってたので萎えた」「主人公相手じゃないのでNTRに見えて嫌」「主人公と絡むので嫌」「小スカ*14地雷です」などなど、プレイ内容が一様でないからこその嘆きの声もそれなりに聞かれはするわけだが。万人のニーズに対応するのって、難しい。

聖剣の神器を名乗るポンコツ(と、その他ゆかいな仲間たち)

問おう。あなたがわたしのマスターか

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↑これにはアーサー王もびっくり。

 

大量の男性キャラクターが登場する本作だが、その中からあえてメインヒロイン(?)を選ぶとするならば、主人公の力によって覚醒した神器・エクスカリバー(通称エクス)であろう。突然異世界に放り出され、悪魔の襲撃を前になす術もなく窮地に立たされた主人公が初めて手にした神器であり、最初の仲間である。

エクスは誇り高く勇敢な騎士としての一面と、『マスター』こと主人公への強い恋愛感情を持ち合わせた、まさに正妻ポジションと言うべきキャラクター。煌びやかな鎧に身を包んだ筋骨隆々の英雄がことあるごとに「さすがですマスター」と主人公にかしずき、共に戦う仲間たちにさえ「私の方がマスターのお役に立ちます」と大人気なく張り合う姿は(見ようによっては)微笑ましい。

また、エクスカリバーはいわゆる配布キャラであり、ストーリーを進行させるだけで入手・育成が可能である。本作の戦闘に欠かせない『神器』、しかもSSR*15であるため、プレイヤーのほとんどは長らく彼のお世話になる。その活躍ぶりに、思わず愛着を覚えてしまうプレイヤーも少なくないのではないだろうか。

個性豊か(すぎる)仲間たち


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↑章ごとにゲストキャラが同行することもあるが、基本的にはオルトー・エクス・ハクマ・ガブが主人公パーティのメンバーである

主人公に同行する仲間はエクス以外にも存在する。

先代導師と共に旅をしたと豪語するぬいぐるみのような精霊オルトー、オオカミ族の次期族長として気を張る青年ハクマ、この世界を創造した原神王を崇拝するイザリオ教の修行僧ガブが、ストーリー進行と共に旅に加わってくれる。また、現時点で実装されている5章までのシナリオには各章ごとのゲストキャラがおり、多くはガチャから排出されるキャラクターだが、主人公と近しい一部のキャラクターはストーリークエストを周回して得られる素材と引き換えに獲得することができる。


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↑アーチェムとコンラットはストーリー素材で入手できるキャラクター。

 

偉大な先達を気取るも概ね役に立たず、何かとコミカルな役回りの目立つオルトー、強情な物言いとは裏腹に主人公に惹かれていくいわゆるツンデレのハクマ、そして持ち前の博識さで解説役として活躍するガブ。前述のエクスも加わって、主人公一行の旅は賑やかに続く――のだが、その賑やかさの描写にやや難があるのが困りどころ。詳しくは後述する。

天使も悪魔もみんな敵


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↑天使と悪魔の戦いのとばっちりを人類が盛大に受けまくるお話です。

 

本作の舞台となる異世界・ヴェストリアでは、空の果てにある『天界』に住まう天使と、地の底に広がる『冥界』に巣食う悪魔が相争っている。タチの悪いことに、彼らはどちらも人間*16を下等な存在と見下しており、人間を傀儡として操って代理戦争をさせるような非道も平気で行う。

「人間は愚か」と信じ込み、支配できないのなら殺しても構わないとさえ考える大天使ザラエル率いる天使たち。己の享楽を最優先し、地上の破壊と混乱を至上の快楽として楽しむ魔王トゥストラ率いる悪魔たち。彼らがヴェストリアで雌雄を決する「最後の審判」が始まってしまったために、人間たちの平穏は崩れ去り、導師たる主人公の力が必要となった――というのが、本作の物語の背景である。人の世を守るために戦う主人公にとっては、天使も悪魔もみな等しくぶっ飛ばすべき敵なのである。

ありふれたシナリオでプレイ感、どう?

……と、まぁここまで色々と説明してきたわけだが正直な話、本作のメインシナリオはそんなに出来が良くない

リリースされたばかりのゲームにあまり厳しい言葉をかけるのもどうかと思うのだが、なるべく優しい言葉を選んでもなお「出来が良くない」としか言いようがない。

概要の項でも語った通り、シナリオの筋そのものが良くも悪くも王道でありきたり、というのは確かだ。だが、世の中にはいわゆる『お約束』の域をはみ出すことなく、むしろそれに愚直なまでに従ったからこそ大衆に支持される物語が数多くある。王道だから、ありきたりだからといって、必ずしも面白くない物語であるとはいえない。

本作の出来の悪さは、シナリオの筋そのものにだけあるのではない。そのシナリオに付随する描写の拙さと、「文章を読む」という行為そのものへの気配りのなさにある。

お爺ちゃん、そのやりとりはさっきやったでしょ

主人公一行の個性については前述の通りだが、本作のメインシナリオにおいてはどうも前述した以外の人格の掘り下げや意外な一面の発露などがイマイチ蔑ろにされているきらいがある。というのも、本作のシナリオの半分程度は主人公一行の意味のないやり取りの繰り返しに終始するからだ。

エクスカリバー執拗な主人公持ち上げと「私が誰より一番」アピール、それに突っ込みつつ主人公への慕情を募らせるハクマ、終始役立たずかつ野暮天で皆に邪険にされるオルトー……といったパーティーメンバーの個性を表す描写が天丼ギャグの如く延々と繰り返される。個性を強調するため、またそうした和気藹々としたやり取りができるだけの絆が彼らの間に育っているということを描写したいのだろうが、いくらなんでもクド過ぎる

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↑いかなる状況においてもマスターへのヨイショを忘れない神器の鑑(皮肉)。

 

同じ言動を延々と繰り返すキャラクターを皮肉って「○○bot」と呼ぶことがあるが、その例に倣うならば本作のエクスカリバーはさながら「さすマス(さすがですマスター)bot」と呼べるだろう。仮にプレイヤーが主人公に自己投影できるのであれば、こうしてヨイショを繰り返してくれるパートナーが隣にいてくれることで多少気分がよくなる、という効能もあるかもしれないが、後述する通り本作の主人公はとても感情移入のしづらいキャラクターになってしまっており、自分に重ねて楽しむことは難しい。そうなると、このようなふざけた描写を繰り返す価値の在処は「クスリと笑えるか否か」に絞られるわけだが、残念ながら大した強度もないワンパターンなネタを何回繰り返されても、出てくるのは乾いた笑いばかりである。面白いというより、呆れてしまうのだ。

お人好しの元社会人の姿か?これが……

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↑原神王アルケーはぶっちゃけ本作におけるあらゆる戦乱と悲劇の元凶なのだが、異常にノリが軽い。本編でも主人公からその点を突っ込まれており、本人も何か思うところがあるようなのだが……

 

続いては、そんな「さすマス」の対象たる主人公が抱える問題について列挙する。

本作の主人公は子供を助けてトラックに轢かれ、異世界に転生するというあまりにも使い古された筋書きを辿り、ドスケベな格好のジジイ神軽いノリで与えられた力によって物語の中心に躍り出る。

この神授の力がとにかく強すぎる。本作の主な敵である天使・悪魔のいずれにも、主人公の力なしでは対抗することができないほどだ。したがって、本作のメインストーリーの中心で活躍するキャラ(とガチャで引いたキャラ)は皆、主人公と絆を結ぶことで分け与えられた力*17によって戦う。メインシナリオに登場しないキャラでも、個別シナリオで必ず主人公との出会い(キャラによっては性行為まで)が描かれ、なんらかの形で主人公と接点を持つことになる。

となると、多種多様なキャラクターと交流し、その全てに少なからず好印象を与えなければならない主人公の性格設定は自ずと定まってくる。そう、『お人好し』である。

悪事に消極的で、他者の善性を信じ、自身もまた他者に対して善行をなそうとする。善なるものには共感され、義に生きる者には認められ、悪なる者であってもそのひたむきさに襟を正す、典型的な『主人公』の人格。それがお人好し。

だが、本作はエロゲーである。お人好しの主人公が仲間に好かれつつ、さらに深いところ――性行為にまで(なるべくハイスピードで)及ぶシチュエーションが成立するようにしなければならない。

この無茶を通した結果、『スケベですぐ男に鼻の下を伸ばしなんなら即ヤリにまで及ぶのに皆に好かれ、讃えられる』というとても成立し難い人格が植え付けられたやべー奴が誕生するのである。


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↑これらはあくまでも一例であり、実際には新キャラに会うたびほぼ毎回こうした色ボケを繰り返す。これもまた天丼である。

 

一応転生前の彼は社会人であり、「営業回りで忙しく浮ついた遊びができなかった」だの、「親身に接してくれた社長に憧れていた」だのと思い出したように元社会人アピールを繰り返すのだが、その一方で異世界に転生してからの成り行きを(選択肢次第とはいえ)ゲームみたいで面白い」だの「軍学校なら鍛錬してる若い雄がいっぱいいるだろうな」だのと自分本位で楽しむ言動も目立つ。理不尽な戦乱に苦しむ人々を憂い、世界の危機に挑む真剣さがイマイチ伝わってこないのだ。ましてや、出会う男ほぼ全員に鼻の下を伸ばすようなドスケベならなおのことである。

にもかかわらず、本作においては彼の行動が世界の行く末を左右する。各国のトップとあれよあれよという間に仲良くなっていき、次々と力を分け与えていく様子は、惚れっぽいだの気が多いだのといった形容が似合う領域を遥かに通り越し、まさしく『節操がない』。このような共感し難い主人公が不自然かつ過剰に持ち上げられ、あらゆる事件の解決が残らず彼の手柄になってゆくさまを眉ひとつ動かさずに見届ける精神力のない方には、本作のシナリオを真面目に読むことはお勧めできない。

また、自分に自信が持てない若者に対し「ひたむきな努力が報われないはずがない」と何の屈託もなく言い切れる社畜根性悪い意味での根の明るさも、彼の人格をチグハグに見せている要因の一つであろう。激務の営業職に休む間もなく勤めていたのなら、どんなに努力しても報われないことの一つや二つくらいあるということを身に染みて理解していそうなものだが……

お前タチる時だけ急に饒舌になるよな(悪口)

さらに、主人公のマイナスポイントはメインシナリオでの言動だけに留まらない。本作最大のウリであるはずのエロイベント、とりわけ彼がタチを務めるシナリオにおける彼の口ぶりが、普段の彼とあまりにも乖離しているのだ。

例として、本作最初のエロイベントであるエクスカリバーとの絡みを挙げたい。主人公は「マスターともっと強い繋がりが欲しい」と性交を求めるエクスカリバーに当初は戸惑うが、割とすぐその気になって交合を始める。出会ったばかり、さらにいえば覚醒して意識を持ったばかり(≒生まれたて)のエクスカリバーに対して「どうして欲しいの?言ってごらん?」「エッチな体だなあ」と堂に入った言葉責めを行う姿は、まるでベッドの上でだけ*18人格が切り替わるスイッチでも用意してあるかのようだ。

その後も各章のクライマックスごとに他のキャラクターとの性交シーンが用意されているのだが、主人公はその多く*19においてタチを務め、またもいやらしい物言いを繰り返す。「一人でしたことあるだろ?どんな風にしてるのか見せてくれよ」「すげえ締め付け」「ふうん、そこ(乳首)が弱点なんだな」などなど、枚挙に暇がない。しつこいほどに『お人好し』を強調される本編の彼と比べ、どうにもオラつきがすぎる。キャラクター個別の寝室クエストでも、タチに回る際は決まってねちっこく相手を責め立てるような物言いに終始するため、やはりオラつきの感が否めない。むしろ、ストーリー内のエロイベントよりも悪化しているとさえいえる*20。相手がいい男と見るなりいきなり脳と下半身が直結されるような切り替えの早さは、共感や感情移入を誘うタイプのキャラクターとはかけ離れた、まるで異次元の生命体のように感じられることだろう。

ちなみに、本作のキャッチコピーは『共感できる「推し」が見つかるRPG』である。これだけキャラクターがいれば確かに共感できる「推し」の一人や二人は見つけられるかもしれないが、肝心の主人公が一番「共感しづらい」のはいかがなものであろうか

推敲、おぼえていますか

主人公の異次元思考に加えて本作への没入を妨げる要素、それは誤字脱字である。

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↑知略を巡らせるならまず『好機』をちゃんと窺ってくれ。

 

本作の地の文や台詞回しは多少古さや拙さを感じるくらいで、まぁストーリーにそこまで力を入れていないゲームならこれくらいだろうという妥協点を見出せるレベルのクオリティなのだが、話の筋や描写は別にしてとにかく誤字脱字が多い。上述のような変換ミスなのかそもそも間違えているのかわからないような誤字に出くわすと、えも言われぬいたたまれなさが胸に込み上げてくる。

 

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↑感動させるシーンにこの脱字はちょっと。

 

脱字もかなり深刻だ。どんなに感動を誘おうとするシナリオであっても、上掲のような拙すぎる脱字が視界に入ってきては台無しである。一部場面では、この手のゲームではおおよそあってはならないはずのキャラクター名の脱字まで豪快にブチかましており、没入感を削ぐ要因の一つとなっている。

また、エロイベント中のセリフなので抜粋は避けたが、「(キャラクター名)の尻」と書くべきところ「の」が抜けて「(キャラクター名)尻」となってしまい、さながら謎の造語のようになってしまっていた時は頭を抱えた。エロイベント中にこんな目立つ脱字をかまされてしまっては勃つものも勃たない。ズボンを下ろそうとしていたこっちの気持ちにもなってくれ。

そして、誤字脱字の嵐をどうにか乗り越えてシナリオを読み進めようにも、次なる難関が待ち構えている。

そんなフォントで大丈夫か?

大丈夫じゃない、問題だ。


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絶妙に気分が悪くなる改行の例。他にも『……』の途中で改行を入れたりするので、モヤモヤ感がどうにも拭えない。

 

本作のシナリオはエロシーンを除いて基本的にスマホ縦持ち用に最適化されているのだが、これまでご覧いただいたプレイ画面からもわかるように、なぜかテキストボックス内の文字が妙にデカい

ただでさえ狭いテキストボックス内にかんたんスマホの文字かと見紛うデカフォントを配置した結果、画面端の折り返しまでに詰め込める文字数はわずか15文字。そんなカッツカツのクソ狭空間の中であまつさえ(まるで横持ちゲームのような)改行など入れるものだから、上に挙げたような気持ち悪い改行が次々と襲いかかってくる。頻発する誤字脱字に加えてそもそもの文章が読みづらいとあれば、とてもまともに物語を読み進める気分になどなれないことだろう。

つまるところ、本作はスマホで遊ぶことを前提にしている割に、スマホで文章を読むことを前提に考えていないのである。テストプレイとか……していらっしゃらない?

 

周回要素が多すぎて、異世界のやつらにまるで太刀打ちできないんですが。

無心で回せ。回転数が全てだ。(至言)

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↑レイドを回り始めて気付く、絶望的な周回要求数。

 

さて、ここからは本作のもう一つの難点――周回について語る。

本作が基本無料RPGにありがちな「周回ゲー」であることは先に述べた通りだが、本作における周回要求コンテンツはあまりにも数が多い。レベルアップなどに必要な素材を得るためのデイリークエス、ガチャ産キャラに紐づいた武器を入手するためのウェポンクエス、限定のSSR神器やその限界突破素材を入手するためのレイドバトル、さらには一度クリアした後のストーリークエスも周回の対象となる。

さらに、要求される素材の量も凄まじい。特にレイドバトル限定のSSR神器を得るために必要な要求数をそろえようと思うと、どんなに多く素材が落ちる難易度で遊んだとしても150回以上の周回をこなす必要がある。現状交換可能な神器は5種あるので、単純計算でも要求される周回数はその5倍。加えて神器の限界突破やそのほかの交換素材を狙おうとすると、更に周回数は増加する。

レイドバトルだけでこれなのだから、他の周回要素もこなそうとすると凄まじい勢いで時間とお金が溶けていく。簡単にやり切れるようなコンテンツ量では飽きられてしまう、希少なSSRの神器をガチャ以外の手段でそう簡単に手に入れられては困る、など事情があるのは理解できるが、それにしてもハードルが高すぎやしないだろうか。テストプレイとか……していらっしゃr

 


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↑各キャラの育成要素もてんこもり。もちろん必要な素材は全て周回で集める必要がある。

 

また、本作はキャラクターの育成ステータスもやたら豊富だ。先述の肉やクエストクリアでもらえる経験値で上がる「レベル」だけでなく、レベル上限を上げる「限界突破」、装備武器とは別枠で装備できる「専用武器」の解放、さらに専用武器によるステータス強化の値を上げる「能力解放」やら通常攻撃の性能を向上させる「攻撃強化」……と、サービスイン直後のゲームにしてはどうもやることが多すぎる。本作のプロモーション方針からして、ゲームに慣れ親しんでいない人にも遊んでほしいという思惑があるだろうということは最初に推測した通りだが、それにしてはあまりに複雑すぎる。飽きずに、諦めずに遊び続けてもらうことを考えて作っているのだろうか。テストプr

凶悪な周回要求と、途方もないやり込み要素。それらをフルに遊びこまなければ初心者ミッションのパネルを全て開けられない*21という仕様も相俟って、残念ながら本作はゲーム初心者には勧めづらいタイトルとなってしまっている。単に推しをガチャで引きたい、エロイベントを見たいというだけであれば、初心者でも楽しめるかもしれないが。

それでもクレサガXを応援したい件

さて、ここまで少々批判的な内容を書きすぎてしまった気がするが、私は『クレイヴ・サーガX』の今後に大いに期待している。

そもそも『ゲイ向けのゲームが大衆に広く知られたプラットフォームからリリースされる』という時点で、前代未聞の大事件である。確かに、上に挙げたストーリーや周回要素、(基本無料ゲームそのものの問題であるため本稿では省いたが)課金要素などの難はある。しかし、サービス当初から多数の人気漫画家・イラストレーターを起用し、幅広い層に向けてアプローチしていくなりふり構わない『攻め』の姿勢には感じ入るものがある。ゲームシステムやストーリーに真新しい要素を用意できずとも、コンセプトとビジュアル、そして何より下半身に訴求するエロ要素のパワーで押し通ろうとする戦略は、いっそ潔いとまで思えるほどだ

なんだかんだと言ってみたところで、まだリリースから一週間も経っていないゲームである。本作が運営の財布プレイヤーの股間の両方にとって心地よい、Win-Winなゲームに成長していくことを、心から楽しみにしている。

頑張れ負けるなクレイヴ・サーガX。まずは周回を緩和してくれクレイヴ・サーガX。

ロトンさんのSSRを実装してくれクレイヴ・サーガX。

 

                                  (終)

おまけ:イカれた推しキャラを紹介するぜ!

――と、ここまで真面目ぶって論じてみた結果すこぶる疲れたので、ここからは私の推しキャラを軽く紹介していこうと思う。

残念ながら運に恵まれていないのでおおむねSR・Rキャラの紹介になるが、その分読者の皆様も手に入れやすいということで平にご容赦を。

デフレヒト -ゴツムチ白ゴリラの痴態でサティスファクション-

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筋肉はゴリラ!牙はゴリラ!燃える瞳は原始のゴリラ!


というわけで、デフレヒトは見ての通りゴリラ獣人である。コピート・デ・ニエベ*22もかくやの純白の体毛は清廉潔白を連想させるが、その実は立身出世に励む野心家だ。

企業グループの経営者から一国の副大統領の座にまで駆け上がり、目的のためならば疑念を呑み込み、時に非情に振る舞うことも厭わない……と書いてしまうと、悪辣な人物のようにも思われるが、メイン・個別シナリオを読み込むと心根は優しい人情家であり、出世や立場のために為すべきことと捨てきれぬ情との軋轢に苦しんでいる面が見えてくる。寝室イベントの内容も『ストレス発散のために秘密クラブに通う』というものであり、彼が日頃いかに苛烈な葛藤に晒されているかを想像させられる。

戦闘時に使用する武器が何もかもを吹き飛ばしそうなビームバズーカであるあたりからも、あちらこちらから絡みつく厄介ごとに辟易とする彼の内面が見て取れる……というのは、さすがに考えすぎかもしれないが。


……まぁそんなことはともかくとして寝室イベントがめちゃくちゃエロくて実用性高いんですけどね!!

地位も立場もあるめっちゃマッチョな白ゴリラが惜しげもなく純白の裸身を晒して白濁に塗れる!淫らなポーズで不敵にほくそ笑みながら精○を搾り取る!!うーん俺の股間にアンビシャスレーザー*23!!

最高のシチュエーションに応えるかのように、文章やスチルの出来栄えも本作屈指のレベルに仕上がっている。副大統領としての厳粛さは口調にのみ名残り、昂りのままに肉棒を強請るその有様はまさしくケダモノのそれ。鼻腔を満たす精の臭いに痴れ切った表情と、純白の体毛に鮮やかに映える黄味がかった○液の濃厚な色合いがひたすら印象的な一夜に仕上がっている。白って200色あんねん、という言葉の意味がわかった気がする。

SRなので容易いとまでは言わないが、SSRよりはまだ入手可能性の高いキャラクターである。運良く手に入れた方は、是非今晩のオカズに用いて満足(サティスファクション)していただきたい。ゴリラだけに*24

シュミエル -物語の神に愛された天使-

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本作の主な敵である天使のうち、最も主人公と深く関わるのがこのシュミエルである。天使の割にやけにイモっぽい顔貌がかわいい(個人の感想です)。

『愚かな人間を正しく導く』という天使の教義に愚直なまでに忠実な彼は、ことあるごとに主人公と出くわしては声高に使命を叫ぶ。そんな彼は、言わば本作における『天使』とはなんたるかを説明する役割を負わされた存在といえる。杓子定規に教えに従うことしかできない彼の有様と、彼に指令を出すザラエルの(おおよそ気が狂っているとしか思えない)無茶振りを目の当たりにして、プレイヤーは『天使』のヤバさをありありと思い知らされるのである。

彼を語る上で欠かせない要素といえば、なんといってもメインシナリオにおける描写の充実ぶりであろう。

本作のメインシナリオがいつものメンバーによる他愛もないやり取りに終始するという問題点は先に述べた通りだが、シュミエルに関してはその限りではない。導師再臨の報によりヴェストリアに派遣されたシュミエルは主人公と出会い、彼と仲間たちが力を合わせて困難を乗り越えてゆく様を目の当たりにする。『人間は天使が導かなければならない愚かしい存在』と教え込まれていた彼だが、主人公たちの活躍に人間の善き面を見出し、従わない人間は殺してもよいとまで言い切るザラエルの教えに疑問を抱いてゆく。

己の信条にそぐわない人々の姿にアイデンティティを揺るがされ、その元凶たる導師=主人公に愛憎入り混じった感情を抱くシュミエルの葛藤は、他のキャラクターとは比にならないほど克明に描写され、(本作のシナリオにしては珍しく)プレイヤーの心を揺さぶる。

もちろん、本作がベタベタの冒険譚である以上、苦悩の末にシュミエルが辿り着く結論にはなんとなく想像がつく。だとしても、それに至るまでの過程がしっかりと描き込まれているだけで、感情移入の度合いが大きく違ってくるのだ。

総じて描写面に恵まれない本作において、主人公でさえ敵わないほどの丁寧な描き込みを受ける、まさに物語の神に愛された天使。それがシュミエルなのである。

……まぁ、よりにもよって主人公に惚れちゃうあたり、いかに物語の神に愛されていようと結局不幸なのではと思ってしまうのだが……

ノーチェ -敬虔なる大司教に潜む野心と獣性-

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はためくローブや前垂れと、その合間から覗く厳めしい鎧と逞しい肉体(となんか褌みたいな股座回りが印象的なノーチェは、イザリオ教の少年教皇・ニネに仕える大司教である。大司教という響きから想像されるものとはまるで違うその剛毅な肉体は、かつて彼が都市防衛の要たる騎士団長であった経歴に由来しており、今でもニネの身辺警護という形でその剛腕を振るっている。

一方、彼の周囲には黒いうわさが絶えない。というのも、彼が騎士団長から大司教に転職したのは誰あろうニネの能力*25によるものであり、いわば彼はニネによって活躍の場を追われたも同然なのだ。更に彼は原神王を崇拝する現在のイザリオ教の教義とは異なり、イザリオ教発祥当時の教義――すなわち、天使崇拝の教えを守り続ける派閥に所属している。今でこそニネに忠実な片腕である彼だが、その胸のうちに野心を秘めていると勘繰られてもおかしくないほど、状況証拠が揃ってしまっているのである。

彼が本当に野心家なのかどうかはメインシナリオのネタバレとなるためここでは伏せるが、彼の寝室イベントを見るに、普段見せる敬虔な大司教としての顔の裏側に牙剥く狼の如き獣性が眠っていることだけは間違いない事実である。幸い彼のレアリティは最低のRであるため、ゲームを進めてガチャを回していればいずれ出会えることだろう。元騎士団長ならではの切れ味鋭い暴れっぷりを、是非ご賞味あれ。

ロトン -一人称わいの職人ドワーフ(出っ腹スパッツ)!勝ったッ!-

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ほっほっほ、ドワーフ好きかい?うん、大好きさ!オイラもだーいすきでゲス!

この手のファンタジーには欠かせない短躯小肥の髭もじゃ種族ドワーフ。本作の世界では人間も獣人も亜人も区別なく平然と共存しているため、殊更にドワーフという存在の特異性が強調されることはない。というか、そもそもドワーフ』という語句そのものが滅多に使用されない。その数少ない使用例が彼――ロトンである。

メインシナリオでも活躍する彼は、とある目的からレジスタンスに身をやつした恩人ベルガモンドの頼れる相棒にして凄腕の技術者。やや口は悪いが面倒見がよく、レジスタンスの仲間からも慕われるよき『おやっさん』である。

この手のドワーフの例にもれずジジイ口調で、一人称は『わい』。立ち上る炎を思わせる髭と髪型に、コロコロと変わる豊かな表情。寸詰まりの体格にミチミチに詰め込まれた筋肉の盛り上がりと、ラフなシャツからはみ出たチャーミングな出っ腹。さらには全身にくまなく茂った体毛、そして何よりスパッツ越しにもわかる股間の著しい膨らみ――こうして身体的特徴を列挙するだけで、何やら胸と股間に込み上げるものがある。ステレオタイプな鎧兜姿ではないにせよ、彼もまた好事家の心を満たす、立派なドワーフなのである。

そんな彼の技術者としての一面は、寝室イベントにおいても十二分に発揮される。本作の寝室イベントではなかなか珍しい展開であるが、抜群のアングルと表情、そして執拗なまでの○○ヒダの描き込みは、マニアックな需要にこれでもかとぶっ刺さる。

見た目と寝室イベントの質は間違いなく(ごく個人的な意見としては)SSR級の彼だが、幸か不幸かレアリティはまたしても最低のRである。入手しやすいのはいいが、一線を張るには心許なさすぎる性能はどうもいただけない。愛しいキャラだからこそ、最前線でバリバリ活躍させたいのが人情というものだろう。

だから先程願ったのです。ロトンさんのSSRを実装してくれ、と。

フブキ -世界観に抗う孤高のどすこい野郎-

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鍛え上げた肉体脂肪の鎧を纏い、廻し一丁の裸形で肉弾戦に挑む猛者たち――日本の国技たる相撲は、ゲイ向け創作の分野においても人気の題材の一つだ。しかし本作の舞台は異世界ヴェストリア。当然ながら相撲などという異界の闘技が伝わっていようはずもない。これには全国の好角家(意味深)も落胆しきり……と、思いきや。

ご安心めされよ、本作にはこともあろうにたった一人で相撲要素を一手に引き受ける漢がいる。ヴェストリアに狂い咲く、相撲ならぬ『フブキ流』創始にして唯一の使い手・フブキ。堂々の土俵入りであります

堂々たる突っ張りの構えからも察せられる通り、フブキは相撲……によく似た彼独自の格闘術『フブキ流』を編み出し、究めんとする求道者である。夢中になると周りが見えなくなるきらいはあるものの、基本的に礼儀正しい犬獣人である彼は、主人公経由で知った『スモウ』『ヨコヅナ』という称号に憧れ、一層の研鑽に励むことになる。

力士というより野武士のような髷状の髪型に、気は優しくて力持ちを地で行くような太眉細目。惜しげもなくさらしたムチムチの上半身に、目を引くピンク色の乳頭デブ専の気がある方なら一目でキュン、と来てしまう抜群のキャラクタービジュアルは、尖った個性を持つ者の多いレアリティRのキャラクターの中でも特に際立っている。

でも力士なのに下半身の露出がないじゃん!とお嘆きの貴方、ご安心あれ。寝室イベントでは『フブキ流の道着』と称して、まさかの六尺褌(のような何か)を持ち出してきてくれるのだ……ってそこは廻しじゃないんかーい!スケベなので良しとしますが!!

……余談だが、フブキの寝室イベントにおける主人公は本作のエロイベントの中でも屈指のオラつきと強引さを発揮するため、オラついた主人公が苦手な方は注意されたし。スチルだけ見るって選択肢もアリですよ。

ガルゴ -ドカタの下着は褌一択!基本だよね!-

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土木作業員、あるいは建築作業員の通称を『ドカタ*26』という。労働の中で自然に鍛えられた肉体が醸し出す独特の荒々しい色気や、男所帯の醸し出す雰囲気、職業そのものに漂う『汚れ』のイメージ*27から、ゲイ向け創作の世界ではドカタが憧憬の象徴として描かれることもしばしばある。

大工の棟梁として部下たちに檄を飛ばす熊獣人・ガルゴも、そんな憧れベースで最適化された『ドカタ』である。叩き上げで培った技術と的確な指示で建築や修繕をたちどころにこなし、仕事を終えたら気前よく打ち上げに花を咲かせる――まさに理想の上司。強固なテンプレートの元に構築された『お約束』なイメージの産物ではあるが、そうはいっても抗いがたい魅力を感じてしまうのは確かだ。『王道』が面白くないわけではないことは、先にも述べた通りである。

そして何より彼、下着が六尺褌なのである。(とても大事なので強調)

寝室イベントで判明するのだが、地の文にも『六尺褌』との明言があるため、おそらくフブキの『限りなく六尺褌に近い道着』ではなく本物の六尺褌なのであろう。詳しい内容は伏せるが、寝室イベント自体もドカタというイメージに憧れる人なら必ず「そうそうこれこれ!」ボルテージアゲアゲになること間違いなしのシチュエーションなので、気になる方はぜひ入手して見ていただきたい。例によって彼もレアリティRなので、そう時間をかけずとも出会えるはずだ。

ちなみに某キャラの酒場イベントでは、主人公が転生前の世界でのお祭りについて言及する場面があるのだが、そこで某キャラは『褌』について知らない素振りを見せている。たまたまそのキャラが知らなかっただけとも思えるが、先述のフブキの『道着』といい、そもそもヴェストリアに褌という着衣およびそれを身に纏う文化が存在しているのかどうかは、少々怪しい面がある。

ガルゴさん。あんたの六尺褌、いったいどこから来たんでしょうかね

ブランドー -校長先生の秘密どころじゃない秘密-

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ブランドーは、とある軍学校の校長を務める猪獣人である。その物腰は軍事関係者のそれとは思えないほど穏やかで鷹揚だが、人を見る目は確かで、才能を持て余し孤立していたアーチェムを見出し、成長を促す活躍を見せている。

朗らかな笑顔とシャツからはみ出たふくよかな腹、教育者の権威の具現たる教鞭を手にしながらも厳格さを感じさせない和やかな雰囲気。優しい描線が連ねられたイラストのタッチも相俟って、外見とメインシナリオでの活躍を眺める限りでは『やさしいお父さん』といった形容が似合うキャラクターといえるだろう。レアリティはRなので懐にもやさしい

――しかし、そんな生ぬるい印象は寝室イベントで跡形もなく木端微塵にされる

例によって詳細は伏せるが、ブランドーの寝室イベントはメインシナリオとの乖離がとにかく凄まじい。優しい先生が実は……というギャップを狙ったものであろうが、そのような意図を図り切ったうえでもなおのこと衝撃を禁じ得ない、人によっては見たことを後悔するかもしれないレベル信じられない秘密が、明かされてしまうのである。

ブランドーが登場するメインシナリオを先に読んだ方は、どうか覚悟して寝室イベントをご覧いただきたい。また、ネタバレを恐れずに先に寝室イベントを見るという方は、その後メインシナリオを読んだ際に何とも言えない心持ちになってしまうことをお覚悟いただきたい。この校長先生、いろんな意味でヤバいのだ。本当に。

グングニル -この槍、悲愴がすぎる-

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さて、ここからはエクスカリバーなどと同じく『神器』に分類されるキャラクターたちを紹介していこう。容姿を一瞥しただけでは世界を破壊し尽くさんとする魔王か何かにしか思えない彼の名前はグングニル。見た目のイカツさに反して大変礼儀正しく、マスターのためなら自己犠牲すら厭わない全身これ忠義の塊のような神器である。

ゴミ捨て場に打ち捨てられていたところを発見されたという経歴もあってか、彼は生まれながらにしてあまりに悲愴な運命を背負わされている。

まず、彼はしきりに『前の主』としてかの北欧神話最高神オーディンの名を持ち出すのだが、そもそも導師の力によって覚醒し意識を持ったばかりの彼に前の主』など存在するはずがない。主人公が持つ転生前の(ゲームの)知識に引きずられ、居もしない『前の主』の存在を記憶に刷り込まれてしまったのだ。そんなことなどつゆ知らず、さもオーディンが実在するかの如く振る舞う彼の姿は痛々しく、せつない。もし自分に『前の主』などいないと知ってしまったら、彼はどうなってしまうのだろうか。

さらに彼の不幸は続く。彼の寝室イベントは酒場イベントで主人公と出会って覚醒した直後の物語なのだが、そこで彼はあまりに酷な仕打ちを受けてしまうのである。ここで詳細を語ることはできないが、廃棄場の奥で悪臭に塗れ続けた末、ようやく主と出会い魂と生きる意味を得たばかりの彼に対する仕打ちとしては最低最悪である。

なぜ彼ばかり、このように惨たらしい目に遭い続けなければならないのだろうか。寝室イベントのスチルの質は高く、シチュエーションも好きな人は好きなのだろうが、そもそもの生い立ちが悲しい彼に対しここまでの残酷を叩きつけられてしまってはもう抜ける抜けないの騒ぎではない股間ではなく頭に血流が――いや、怒りが込み上げてくる。

救いたい……グングニルたんを救いたい……

っていうか救われろマジで……!!

ウゴウ -中華風おっさんの無知シチュにご興味はおありで?-

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ウゴウ、と聞いてピンとくる方は結構な神話好き、あるいは中国の歴史に詳しい方であろう。漢字では『烏号』と書くこの名が持つ意味は『むせび泣き』。中国五帝最初の帝・黄帝が持っていたとされる名弓であり、のちに黄帝が仙人に転じて昇天した際、部下が彼を射ち落としてでも止めようとしたが果たせず、弓を抱えてむせび泣いたことからこの名がついたといわれている。

本作に登場するウゴウも、その名の由来に違わず結構な感激家である。神器として覚醒したばかりということもあり何を見ても感動が先に来る彼は、導師が自分を目覚めさせてくれたことに感動して泣き、オルトーのかわいさにも泣き、挙句の果てに激しいハグをする一人称『予』の中華風おっさんが、まるで子供のように目に映るすべてに情動を揺さぶられる姿は、本作における神器の設定あってこその超特殊な萌えシチュであるといえるだろう。

寝室イベントも、そんな彼の無知シチュ*28適性を見事に活かしている。言われるがままに意外にも筋肉質な裸体を晒し、淫らな姿勢のまま初めての快楽を刻み込まれてゆくその姿が、立体的なアングルが秀逸なスチルと共に艶やかに描き出されている。本作の中ではストレートにゲイ受けする容姿ではない方の彼だが、噛めば噛むほど滋味が湧き出るさながらスルメのような御仁であるので、引き当てた方は是非念入りに愛でていただきたい。いいですよ。おっさんの無知シチュ。

フレイ -頭のてっぺんからつま先までゴン太の超兄貴-

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推しキャラ紹介のラストを飾るのは、黄金の短髪褐色肌がまぶしい灼熱の銃剣・フレイである。全身くまなくバイィィィン!!という擬音が似合うムッチムチでゴッリゴリの肉体、特にラグビーボールを二つ連ねたような大胸筋がたまらない。腹回りや左腕に刻まれた緑のトライバルタトゥーも、重なり合う筋肉の陰影に絡みつくようでなんともセクシーだ。一目惚れ上等、街に繰り出せばきっと誰もが振り向く歩く筋肉城塞、それがフレイなのである。

容姿だけでも思わず『兄貴』と呼びたくなってしまう男らしさを誇る彼だが、酒場イベントでもその兄貴ぶりを遺憾なく発揮。初対面の主人公に「あんちゃんもよく見るとかわいい顔してんなぁ」と大胆不敵にアプローチし、嫉妬するエクスカリバーに「盗りゃしないさ。な!」と主人公の肩を抱き寄せながら豪語してみせる、というマッチョイズム全開のムーブをこれでもかと見せつけてくる。覚醒したてにもかかわらずこの豪気さ、本作に登場する神器の中でも屈指の大物と言えるだろう。SRだけど。

そんな彼の寝室イベントはもちろん迫力・ド興奮のシロモノなのだが、フレイ兄貴につられるように何故か主人公まで大幅パンプアップを果たしているところは少し笑える。多数のイラストレーターを起用している本作において、主人公の容姿が担当者によって異なることくらいは日常茶飯事だが、フレイ兄貴の寝室イベントにおける主人公は特に普段とのギャップが大きい。幸運にもフレイ兄貴を入手できた方は、設定が同じだけのパラレルワールドの話では?とまで思えるほどの絵面の差異を楽しみつつ、肉と肉がはじける音まで聞こえてきそうなパワフルなまぐわいを堪能していただきたい。

 

                            (今度こそ終)

画像出典:『クレイヴ・サーガX 神絆の導師』©️2022 EXNOA LLC

*1:X版の直リンは流石に憚られるのでリンク先は通常版の公式。『X』の詳細は『R-18版はこちら』のボタンからチェックだ

*2:DMM GAMESのR-18作品を扱うレーベル

*3:『サンクタス戦記-GYEE-』『龍脈のアナザーエイドスR』など。また、LGBT向けという名目ではあるが、ライフワンダーズが運営するゲーム(『東京放課後サモナーズ』『LIVE A HERO』)も男性キャラクターの比率が高く、ゲイ層から厚い支持を受けている

*4:https://dmmgames.co.jp/recruit/data/

*5:『キラキラした』生活を送るリア充なゲイを指す造語。揶揄や皮肉を含んで使われることも少なくない

*6:様々な意味で使用される語句だが、ここでは「現実世界とつながりのある異世界」を舞台としたファンタジーを指す語句として扱う

*7:どちらかが妊娠するというわけではなく、コウノトリよろしく神霊が運んできてくれるらしい

*8:神器は除く

*9:伝説の武器が化身した特別なキャラクター。エクスカリバーゲイボルグミョルニルなどが該当

*10:SSRの第2イベントを除く

*11:攻め役。モノを入れる方

*12:ネコとも。受け役。モノが入る方

*13:何をもってハードとするかは人の基準によると思うが

*14:「スカトロ(排泄物プレイ)」の一種。お小水(なるべくボカした言い方)が絡む性行為のこと

*15:本作のキャラ・神器・武器のレアリティはSSR>SR>R(>武器のみN)。もちろん、レアリティが高ければ高いほど強い

*16:ちなみに、本作では獣人やドワーフのような亜人も等しく「人間」と称され、特段人間同士で差別や偏見が持たれている気配はない

*17:厳密には『主人公から分け与えられた力』によって当人の潜在能力がフルに発揮され、力を得る。なんにせよ、主人公なしに天使や悪魔と戦えないのは確かである

*18:この時エクスとは野外でまぐわっているのだが

*19:一応、ウケに回るシーンもなくはない

*20:一方、個別寝室でウケに回る際はむしろしおらしいほどに快楽に素直になり、ことあるごとに嬌声を上げているくらいなのだが

*21:レイドバトルを幾度も周回しなければ達成できないエクスカリバーの2段階限界突破や、かなりの量の経験値アイテムを要する主人公の最大レベルまでの強化、先述のウェポンクエストによる武器の完成など、膨大な周回を要求するミッションが多い

*22:バルセロナ動物園の人気者として知られた、アルビノ(先天性色素欠乏)のニシローランドゴリラの名前

*23:デフレヒトの通常攻撃の名称

*24:何のことか見当のつかない方は『亜空大作戦のテーマ』でググっていただきたい

*25:不思議な力で魔物を寄せ付けないらしい

*26:蔑称として使われることもあるので、口にする際はTPOにご注意を

*27:ここにおける『汚れ』は敬遠されるものではなく、むしろ歓迎されるものである。流れる汗を拭いもしない男らしさの象徴として『汚れ』を好むゲイは少なくないのだ

*28:知識が乏しい相手に何らかの詐術をもって性的な行為を行うシチュエーションのこと。その性質上、対象はショタやロリが適することが多く、ウゴウのように中年男性が適性を持つのは稀