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私は屋久島に行ったことがない。
(さらに言うと九州に降り立ったことがない)
そもそも出不精の身なので、よほどのことがない限り灯台一つを目当てにして観光旅行になど行きはしない。
もしもたまたま通りがかったところに灯台があったなら「いいな」と思い写真の二、三枚は撮るだろうが、逆を返せば自分にとって灯台とはせいぜいその程度の思い入れしかない存在である。
それがなぜ、わざわざ休眠状態だったブログを動かしてまで、しかもわざわざ南の果ての孤島に立つ灯台の話をしようと思ったのか。
それを説明するにはまず、『燈の守り人』なる擬人化プロジェクトについて語らなければならない。
日本のサブカル文化に『擬人化』というジャンルが定着して久しいが、本作は日本全国の灯台を擬人化するありそうでなかった……いやなさそうでなかったプロジェクトである。その発想はなかった。
最終的には88基の灯台を擬人化する予定*1で、キャラクターの活用権はモデルとなった灯台が立つ各自治体に進呈され、町おこしへの活用が期待される。また、各キャラには声優がキャスティングされ、YouTube上でオーディオドラマや各灯台の音声ガイドが公開されている。
実際にYouTube上で検索してみればわかると思うが、キャストの豪華さに反比例して再生数は伸び悩んでおり、本プロジェクトの知名度のなさが窺える。もっとも、このあたりには本作のメディアミックスの柱になり得るであろうWebtoonの制作遅延*2や、この手の擬人化ものが飽和の末に下火……というか、玉石混淆になっている現状も影響していると思われるが。今時、ただ擬人化しただけでどうにかなるものではないのである。
まあ、そんな世知辛い事情は抜きにして。
とりあえず公式サイトのキャラクター紹介を見ていただきたい。
パッと見はいかにもこの手の擬人化ものらしいイケメンぞろいである。とはいえ、決して似たりよったりの有象無象にはなっていない。ページを開いて少し眺めてみるだけでも、生真面目そうなヤツ、ダウナーそうなヤツ、ちょっと幼げなヤツ、ちょっとゴツめのヤツなど、それなりに個性豊かなメンツが揃っている。
だが、いくら個性があるといっても、あくまでも『イケメンの範疇での』個性である。
いかに差別化を図ったとしても、結局のところ麗しい外見と認識される範囲から抜け出すことはできていない*3。
まあ、この手の作品のメインターゲットが(おそらく)女性である以上、そちらに受けのいいキャラクターをそろえざるを得ないという事情は十分理解できるのだが――などと考えながらスクロールを進めていくと、『それ』は現れる。
なんか
すごい
ゴツムチ半裸髭おっさん(CV:塩屋浩三)が
急に
生えた。
急に!!!!!!!!
生えた!!!!!!!!!!!!
ここまでお読みの方はすでに察してくださっているものと思うが、今回語りたい『屋久島灯台』は実在の建築物ではなく、こちらのプロレスラーみたいなぶっとい、ぶっっっっとい御仁である。イケメンの群れから急にこんなドタイプのおっさんが飛び出してきたもんだから心臓が止まるかと思った。
なんやかんや38基もの灯台を無難に手堅くキャラクター化してきた『燈の守り人』プロジェクト、突然のご乱心である。漂うのは、言葉で語るまでもない圧倒的違和感。素人考えにもすわ路線変更かと身構えてしまうほど、屋久島灯台は他の灯台と『色』が違いすぎるのである。わかりづらいたとえをするならば、『刀(ピー)乱舞に殴り込みをかけるゲイ向け同人ゲーのファン人気第2位くらいのキャラ』といったところだろうか。にこやかに騎乗位で搾り取ってくるスチルがありそう。
一方、他のキャラとの親和性を抜きにしてしげしげと眺めてみれば、もちろん擬人化ものとして外してはいけない筋――すなわち、元になった事物にちなんだ意匠はしっかりと取り入れてある。
肩に担いだ大綱は、屋久島に伝わる十五夜祭りで綱引きや相撲の土俵に用いられる綱に由来し、形状は屋久島に数多く伝わる龍神伝説をモチーフにしている。また、左肩から胸にかけての紋様はさながら屋久杉の枝のようで、豊かな屋久島の森をその身をもって体現している。
その堂々たる体躯も、樹齢二千年の縄文杉にインスピレーションを得たと言われれば思わず首を縦に振ってしまうほどの迫力がある。なるほど確かに、屋久島に建つ灯台の化身としてはこれ以上ないほどふさわしい姿だ。
――いや、まあ、ふさわしいとは、思いますけども。
それにしたってこの恵体はヤバいでしょうよ!!!!!!!!!!!!!
何この雄っぱい!?何この腹筋!?腕太゛ッッッッッと!!!!胸毛腕毛手の甲にも毛毛毛毛毛生え生え生えてるしもう何!!!!この!!!!!男性ホルモンの化身みてえな灯台は!!!!!何なの!!!!!!!!????????
しかも男性キャラすら乳首が省略される今日この頃にちゃんと乳首がある!!イエス!!イエス乳首!!!!ノー乳首ノーライフ!!!!!!
つい興奮して身体の話ばかりしてしまったが、当然そのご尊顔も体に引けを取らないレベルで素敵だ。デカっ鼻と笑顔から覗く八重歯、太眉の下のつぶらな瞳にツンツンヘアーともみあげ一体型顎髭。つまるところ、好きな要素全部盛り。こんなにんじんを目の前にぶら下げられたらもう千里の道でも1000km/hで疾走できそう。
そして何より、このイケメン一辺倒のプロジェクトの天井をぶち破るかの如くこんな雄ッ気ムンムンのゴツムチ半裸髭おっさんをお出ししてくるその気概に、もう完敗で乾杯なのである。根っこが天邪鬼なので、こういうことされると好きにならざるを得ない、応援せざるを得ないのです私。
ビジュアルも素晴らしいが、声優さんのチョイスも大変に良い。
ふくよかだったりひょうきんだったりするキャラの声を当てられることの多い塩屋浩三さんだが、屋久島灯台としての演技は硬軟取り混ぜた変化球といった印象。冒頭でサルたちを一喝する野太い声と、人の営みを見守り彼らの日々の暮らしに一喜一憂する優しく柔らかな声の使い分けで、屋久島灯台の持つ『巨木のような豪快さ』と『温かい包容力』*4をいずれも豊かに表現している。
荒波に揉まれる補給船をただ見ていることしかできない歯がゆさを『情けない』と自嘲しつつ、それでも祈ることをやめない健気さには特に胸を打たれた。自然に翻弄されながらも強く生き抜く人間を愛し、その喜びを自分の幸せとして受容できる――なんてこころのうつくしい灯台なんだ。むしろ聴いてるこっちの方が情けなくなってくるぞ。私も屋久島灯台さんを見習ってもっと広い心を持ちたい……
当人は『まさか灯台を演じるとは*5』と驚かれていたようだが、バッチリ合ってますよ灯台役。これ以上はないってほどしっくりきてる。たぶん声込みで抱かれたい灯台ナンバー1決定戦やったら勝てる。
ちなみに、同じく塩屋さんによる音声ガイドもある。こちらはあくまでも屋久島灯台ではなく塩屋さんご本人のナレーションだが、仮にこれを屋久島灯台さんが読んでいると考えると、あの巨体*6をアフレコブースに押し込めて一生懸命真面目なナレ読みをしている姿が容易に想像できてなんだか面白い。
いとおしい……いとおしすぎるぞ、この灯台……!!
とまぁ、ビジュアルとオーディオドラマ15分強しか供給がないようなキャラクターに、かくも私は惹かれ始めてしまっているのである。
どうしたらいい。どうしたらこの人を応援できる。
一人で延々と幻想夜話を聴き続ければいいのか?マジで屋久島灯台に聖地巡礼するしかないのか?何かグッズとかないのか?
……とか思っていたら、公式ショップで他のキャラのアクスタやデフォルメ頭部フィギュア(正直あんまりかわいくないが)が売っているらしいので、多分そのうち屋久島灯台のグッズも売り出すだろう。とりあえずそれは買うことにする。
いやあ、どこから何の沼に落ちるかわからないものですね。みなさんも急な沼落ちにはくれぐれもご注意ください。特にそんなにメジャーじゃないジャンルの特段光の当たらなさそうなキャラクターへの沼落ちには、特に。
まぁ、そういうキャラだからこそ惹かれる性分なのかもしれませんけども。
(特にオチもなく終わり)
※02/07追記
公式からの唯一の供給を更に噛み締めるべく、幻想夜話の内容を書き起こしてみました。手元にテキストを置きながら聴きたい方や、忙しくてドラマを聴く余裕がない方にオヌヌメです。
でも忙しい人はそのうち忙しくない時にぜってぇ聴いてくれよな!!
https://privatter.net/p/9754967
*2:一部ニュースサイトでは『2022年3月(8月、11月とも)公開予定』の記述があるが、現在の公式サイトでは『2023年春公開』となっている
*3:思いっきりショタっ子に振り切った菅島灯台など、ごく一部に攻めの姿勢が見られはする
*4:公式Twitterでの形容。 https://twitter.com/akarinomoribito/status/1619621378432319488?s=20&t=EVfUutPs0QytwSEBC-eKNQ
*5:こちらも公式Twitterでのコメント。 https://twitter.com/akarinomoribito/status/1619259114982342656?s=20&t=EVfUutPs0QytwSEBC-eKNQ